どうして塾に行かせているのに成績が上がらないの?
それは塾では勉強しないからです。
…と言うと
「え!? 塾へ勉強しに行ってるんじゃないの?」
大抵の保護者の方はそう思われるでしょう。勉強をさせるために子供を塾に行かせているのですから。
今の子どもたちの多くは学校が終わって家に帰り、食事をしてから塾に行ったり、クラブ活動や他の習い事をしてから塾に行ったりと、とても忙しいです。
一斉指導型の塾に行けば成績別に編成されたクラスで英語や数学の授業を受けることになります。1時間くらいの授業を2コマか3コマ受けて帰ります。そして塾で出された宿題を家に帰ってから、もしくは塾のない日にすることになります。
その宿題。
習ったことを理解し、その上で正解すればもちろんOKです。
でも…理解することなく間違えていた場合はどうでしょうか?
誰しもが当たり前のように間違える典型的な問題なら先生も指導するでしょうが、たまたまその子だけ理解していない箇所だったらどうなるでしょう?
塾によっては、宿題の解答だけ渡されて先の授業へと取りかかることも珍しくありません。その解答で自分の間違いに気づき理解するならそれでもいいでしょう。
しかし、なぜ間違ったのかがわかり、それを訂正できる子どもは多くはありません。自分が理解していないということに気がつくだけでも未来は明るいでしょう。と言うのも、自分が理解していないことを理解するのは意外に難しく、多くの場合は簡単にやり過ごしてしまいます。
最悪なケースは理解していないのに答えが偶然正解してしまった場合でしょう。間違えば理解し直すチャンスを得るわけですが、たまたま正解するとそのチャンスさえ失ってしまいます。そして一斉授業形式の塾の多くでは声を上げない、質問をしない(質問すべきだと気づいていない)生徒たちは放置されることになります。
そもそも受け身的に授業を聞くだけで苦手なところや理解できていない箇所が解決される子どもならば、塾に行く必要はなく学校でしっかり授業を受けていればいいのです。
多くの塾では授業が中心で理解の定着は家庭での自己勉強にかかっています。つまり勉強とは「授業を聞く」ことと「定着をはかる鍛錬」に分けられ、その両方が必要となるのです。
「話を聞いただけで出来るようにはならない。」
プロサッカー選手の鮮やかなプレーを見てボールのけり方や理屈だけ知っても、練習をしなければ自分が出来るようにならないことと同じことです。また一斉授業ではわからなかったところに戻って教えてくれたりはしない(できない)のです。
定着をはかる鍛錬、またそれを何度も繰り返すことを放棄して、授業を聞いただけではよっぽどでない限り成績が上がることはありません。
「習いに行っているのに成績が上がらない」、「同じ間違いを何度も繰り返す」、「うっかりミスが多い」・・・
「塾に行っている」だけで成績向上に必要な鍛錬である自主学習(反復練習)が欠けていれば予想できる結果です。これらの悩みをスポーツでも楽器でも習っている人の悩みに置き換えて考えてみてください。解決法は何でしょうか?
よく「勉強のやり方を教えてほしい」という要望を受けます。もちろん塾としてはその要望に応えるべくあの手この手を使って指導するのですが、その言葉の背後に時折感じられることは、「苦労せず成績を上げたい」ということとほぼ同義の期待です。
残念ながら『これをしただけで絶対に上がる』という魔法のようなテキストや指導法はありません。また「塾に通ったから他では全く勉強しなくていい」という考えの人の成績はまず上がりません。逆に「塾に行ったのだから、もっと勉強しなくては」という人は間違いなく上がります。威張って言うまでもなく当たり前ですよね。
こういった理由から、「塾に行っているのに成績が上がらない」場合、塾の力量も当然ですが、授業を聞いているかどうかと自主学習が十分できているかどうかの2点に注目すると問題の解決策が見えてきます。
つまり、塾の授業を受けることは勉強ではなく、理解をするための情報を受け取り、理解への準備をしている段階なので、授業を受けた後の定着をはかる自主学習を抜きにしては、塾に行っても成績が上がらないという結果になってしまうのです。